クイズです。
昔々の家に必ずあった、とある家財道具です。なんの道具のことでしょうか。
ヒントから当ててみてください。
1 親が近くにいると使いづらかった。
2 長く使うと怒られるので用件を短くまとめる必要があった
3相手の顔が見えず、声の調子で気持ちを推察していた。
4呼び出されるときにうるさいくらいの音を発していた。
5彼氏、彼女からかかってくると、こそこそ話す工夫のために頭をフル回転させていた。
答えは黒電話です。黒かったダイヤル式の重量感、存在感のある電話。
もう黒電話をしらない世代の方が大半なのかもしれません。
黒電話が鳴る音は、少し不快でした。
家の奥まで響くような、大きな音です。
その音を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと縮むようなことがありました。
もしかして、と思う相手がいるときです。
親の位置をさりげなく確認して、
平静を装いながら「はい」と出る。
声はできるだけ低く、落ち着いた調子で。
でも、耳に届いたその声を聞いた瞬間、
心臓がどくんと音を立てるのが、自分でも分かりました。
恋をしている相手からです。
でも、それを悟られてはいけない。
黒電話の前では、感情は簡単に隠せません。
声の上ずりや、返事の間に、
気持ちはどうしてもにじみ出てしまいます。
長電話は禁物でした。
親が近くにいる気配を感じるたび、
用件を短くまとめようと頭をフル回転させます。
けれど、切るタイミングが分からない。
もう少しだけ話したい。
でも、これ以上は怪しまれる。
そんな気持ちが、受話器の重さとして手に残っていました。
家族に聞かれないように、
声をひそめたり、背中を向けたり、
コードが許すぎりぎりまで離れてみたり。
それでも、完全に隠すことはできません。
浮ついた気持ちは、どうしても声に出てしまうからです。
電話を切ったあと、
何事もなかったような顔でその場を離れるのが、
いちばん難しかったかもしれません。
胸の奥では、まだ会話が続いていて、
気持ちはふわふわと落ち着かないままなのに、
日常に戻らなければならない。
黒電話は、恋をするには、少し不親切な道具でした。
けれどその不親切さが、
ひとつひとつの言葉や、
声のぬくもりを、
今よりもずっと大切にしていた気がします。
0コメント