もし好きな場所へ旅行できるとしたら、どこへ行きたいでしょうか。
名所を巡る旅、神社仏閣を訪ねる旅、旅館でごちそうをいただく旅。
あるいは、温泉にゆっくり浸かる旅もいいですね。
温泉に入ると、身体の芯から温まり、自然と心もほどけていきます。
温泉ではありませんが、かつて私は湯船に浸かることを目的に、週に四日以上、銭湯へ通っていた時期がありました。
冬の夕方、空がまだうっすらと明るい時間帯。
手にはタオルと石けんを入れた袋を提げ、外の冷たい空気に吐く息が白くなる頃です。
暖簾をくぐると、番台があります。
脱衣所は天井が高く、声や物音がよく響きます。
木のロッカーを開ける音、体重計に乗る音、どこかから聞こえる笑い声。
そこには、懐かしさを誘う空気が満ちていました。
湯船では、大人たちが静かに身体を温めています。
知らない人ばかりではなく、顔見知りもいましたが、落ち着いた距離感を保つため、よけいなおせっかいはしません。
裸でいるからこそ、余計なものは削ぎ落とされ、そこにいるのはただの「人」でした。
湯上がりにはフルーツ牛乳が定番です。
銭湯を出ると、しばらくは身体がほかほかと温かく、外の冷気さえ心地よく感じられました。
昔ながらの馴染みの銭湯。
行かなくなって、もう三十年ほどが経ちます。
今はどうなっているのか、ふと気になることがあります。
家のお風呂では味わえない、広々とした湯船とサウナ。
今でも、とても懐かしく思い出される場所です。
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